FBS・BBSのバランスの解釈・考察ってどのように考えればよい?

FBS・BBS
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FBSってバランスを総合的に見ることが便利ですね

FBSは便利が故に点数が出たあと「だからなんだ?」ってなりませんか?

「だからなんだ?」って?

えっとー、カットオフ値を超えたから病棟歩行自立OKってだけでは虚しくありませんか?

せっかく細かい検査や評価をしたのにカットオフ値だけを気にするだけなら有効活用できていないってことですよね

そうです。それぞれの項目の検査が持つ意味を見出すことで良い訓練へと有効活用していきましょう

わかりました。FBSの評価をどのように解釈するのか教えてください!

バランス検査には

  • 現状のバランス機能を理解すること
  • バランスを取ることに必要などのような機能低下があるかを理解すること

の2つの意義があります

今回はFBS・BBSの下位項目にはどのような要素があり、どのような機能低下が予測されるのかを考えていきましょう

テスト1 椅座位からの立ち上がり

椅子からの立ち上がりを構成する主な要素として

  • 予測的姿勢制御
  • 筋力
  • 関節可動域

があります

予測的姿勢制御

椅子から立ち上がるときに観察される要素の中で、主に予測的姿勢制御が関与していると考えられます

座った状態から立ち上がる際に、支持基底面が急速に狭まり、大きく前方に偏るという変化が生じます

この支持基底面の変化を予測し、姿勢を制御できなければ、椅子からの立ち上がりはうまく行えません

検査の際に注意すべき点としては、次のような代償手段があります

  • 椅子の肘掛けを持ち、ゆっくりと立ち上がる動作を行う
  • 何度かお尻を浮かせて試行してから立ち上がる動作を行う

これらの行動が見られる場合、予測的姿勢制御の能力が低下している可能性があると推測されます

予測的姿勢制御についてよくわからない方は、以下の記事も参考にしてください

反応的姿勢制御

立ち上がり動作の特徴として急激に支持基底面が狭くなる特徴があります

大きく動く重心を狭い支持基底面に保持する為には予測的姿勢制御では不十分です

それを補うための反応的姿勢制御の能力も大切となります

離殿後に重心を高く持ち上げる時に強い抗重力の活動が必要となり、反応的姿勢制御が強く必要です

離殿後の重心を高める相でふらついたり、失敗が見られる場合には反応的姿勢制御が十分に機能していないことも考えられます

筋力

立ち上がりには重心を大きく高く持ち上がる必要があるため、筋力低下も影響します

中でも大腿四頭筋の筋力は高齢者の立ち上がりに要する時間に関与する最も重要な要素であると言われています(Lordら2002)

そのため、大腿四頭筋の筋出力も大きく影響を及ぼしそうです

ここで注意が必要なのが、筋持久力です

高齢者も1回だけであれば強く筋力が発揮できることがあります

しかし10回、20回と回数を増えることで筋力を維持できないことがあります

そのため、検査場面では10回以上繰り返して行うことで徐々に動作が拙劣となるようであれば筋力が低下している可能性があると予想することもできます

関節可動域

立ち上がり動作を行う上で適切な可動域も不足していればその分代償動作が必要となります

それを考えると関節可動域の低下もこのテストの点数を下げる一因となると考えられます

特に足関節背屈の角度は重要で10度以上の背屈がないと立ち上がり動作が非効率となり努力性が高まる可能性があります(森田ら 2012)

また足部の位置を後方に移動させることで股関節の最大平均伸展モーメントをより小さく(148.8Nmを32.7Nmに)することができると報告されています(Janssenら 2002)

足部の位置が後方に移動できないということは足関節の背屈ができないこととほぼ同じ意味になります

背屈角度が不足すると下腿が前傾できず十分に体幹や股関節も前傾できず、重心を前方に移動しづらくなり結果筋力が代償する必要性が高くなってしまいます

なのでやたら大変そうに立ち上がりをしている場合には筋力だけではなく、同時に可動域制限も予測されます

テスト2 立位保持(2分間の立位保持)

立位保持を構成する主な要素として

  • 関節可動域
  • 感覚統合
  • 筋持久力

があります

静的立位アライメント(関節可動域)

2分間の立位保持は立位の効率性が高いかが重要になってきます

それを考えると立位におけるアライメントは重要な要素の一つです

膝が伸展マイナス20度(常に膝が20度曲がっている状態)であれば常に大腿四頭筋は活動を要求され、非効率な立位となります

その中での2分保持は難易度が高まってしまいます

立位保持の項目の点数には姿勢アライメントも重要な一因となると考えられます

感覚統合

立位姿勢を保つためには感覚が必要です

  • 深部感覚
  • 前庭感覚
  • 視覚

姿勢を保つためには上の3つの感覚の情報をうまく統合していることも立位保持するためには必要な要素です

運動の多様性(筋持久力)

立位保持時間を2分間行うにあたり、常に同じ筋肉が働き続けているわけではありません

重心の位置が揺れることで運動する筋肉も切り替わります

股関節で言えば床反力が股関節の前方を通れば大臀筋やハムストリングス等の股関節伸筋が働きます

反対に床反力が股関節の後方を通れば股関節屈筋の腸腰筋や大腿直筋が働きます

これらを切り替えることで局所的な筋疲労が起きずに姿勢を保つことができます

しかしもし身体が股関節屈筋を活用するイメージが無ければ2分間常に股関節伸筋を使い続けることとなります

そうなるとこの課題の難易度が高まってしまいます

結果、筋持久力での代償が必要となってしまいます

この課題後に疲労を強く訴える場合には拮抗した筋群との協調した運動が苦手な可能性があります

その他

立位保持には後ほど出てくる下記の評価と比較することで解釈できる項目もあります

  • 閉脚立位
  • 閉眼立位
  • 継ぎ足立位
  • 片足立ち

他の評価と統合することで解釈できることが出てきます

テスト3 座位保持(両足を床につけ、背もたれに寄りかからずに座る)

座位保持は立位保持と要素は似ています

静的座位アライメント(関節可動域)

座位を保つためのアライメントが保持できなければ座位保持はできません

その上で座位に必要な関節可動域が保たれているかが一つの要素となります。

感覚統合

保持時間に限らず、座位姿勢を保つためには感覚が必要です

深部感覚・前庭感覚・視覚の情報をうまく統合していることも立位保持するためには必要な要素です

テスト4 着座

筋出力

着座時に必要な要素の1つとして筋出力が考えられます

高い重心をゆっくりと下すためには筋肉を遠心性に活動させる必要があります

遠心性活動には強い筋出力が求められます

着座が不安定な場合には筋出力の低下が一因である可能性が考えられます

筋出力が低下しているケースで見られる代償としては着座直前(殿部接地直前)に重みに堪えられず、ストンと落ちるように制御できないことがあります

予測的姿勢制御

着座が困難な理由の2つ目は予測的姿勢制御が行えていないことが考えられます

着座は立位と言う狭い支持基底面の中で両下肢を屈曲させ、重心を下げていく運動を行います

狭い支持基底面の中で自身を動かしたらどのように重心が動揺するかが予測できていないと困難となります

姿勢制御が苦手な時の代償として、下腿後面をベッドにつけたり、両上肢を一生懸命下方に伸ばし座面を探るような動作が見られます

関節可動域

立ち上がり動作を行う上で適切な可動域も不足していればその分代償動作が必要となります

それを考えると可動域の低下もこの着座のテストの点数を下げる一因となると考えられます

テスト5 移乗

一側下肢へ重心移動し反対側をステップする

移乗は1立ち上がり、4着座の要素に加えて新たにステップ動作をする必要性があります

そのため、一側下肢への重心移動が必要となります

4までのテストでは左右両方を使用する両側性の課題でした

しかし移乗となると一側性の課題が出てくるため、いわゆる健側のみでの代償が困難となってきます

なので移乗には立ち上がり、着座に必要な要素に加え一側下肢への重心移動の要素が必要となります

テスト6 閉眼立位保持

視覚以外の感覚統合

閉眼立位は目を閉じて10秒立位保持する課題です

テスト2の立位保持とは目を開けているか閉じているかの違いのみです

なのでテスト2の要素に加えて視覚以外の感覚統合が行えているかがこの要素の構成要素となります

テスト2が容易であったにも関わらず、このテストが困難であった場合には視覚代償が強いことが予測されます

言い換えると表在感覚や深部感覚、前庭感覚を利用して姿勢を保持する能力が低いと予測されます

感覚の再配分

上記の感覚統合と似ていますが再配分が困難な場合にもこのテストはうまく行えません

再配分は深部感覚・前庭感覚を利用できるにも関わらず、視覚優位の姿勢制御から再調整できないことを言います

テスト7 閉脚立位保持

一側下肢へ重心移動し反対側をステップする

自身で左右の足を付くように揃え、閉脚し1分間保持するテストです

閉脚させる動きもテストの一つです

そのため5項目目の移乗のテストと同様に一側下肢への重心移動する能力も必要となります

重心動揺が小さい

閉脚立位の特徴は支持基底面が狭くなり、安定性限界も小さくなることです

小さい安定性限界内に重心を留めないとバランスを取ることが難しくなります

その為、閉脚立位でも保つだけの重心動揺の小ささが必要となります

テスト2の立位保持と比べると時間は短いものの、バランス保持としての難易度は高まります

より高度な立位保持に必要な要素を求められる課題です

テスト8 上肢の前方リーチ

感覚機能(身体イメージ)

前方リーチは90度挙上した上肢をどのくらいの距離、前方へ突出させられるかを見るテストです

このテストでは上肢を前方へ突出させた後、安全に戻ることも大切になります

そのため、安全に戻ることができる範囲を自身で理解しておかなければなりません

その観点から考えると足底を知覚できる感覚機能が必要です

足底の感覚運動機能

前方リーチするためには身体重心を前へ移動させる必要があります

身体重心を前に移動できないと手を前に出すと同時に臀部・下肢を大きく後ろに引く必要があります

そうすると前方へリーチできる距離が短くなってしまいます

またこの時には身体の重心も低くなってしまいます

Horak FB. Postural orientation and equilibrium: what do we need to know about neural control of balance to prevent falls?. Age Ageing. 2006 Sep;35 Suppl 2:ii7-ii11.

足底の感覚運動機能が良ければ図のAのように重心を高く保ったまま前方へ重心移動できます

しかし悪ければ図のBのように十分に前方へ重心移動できず、リーチの距離も短くなってしまいます

筋の協調性

足底を知覚できる感覚機能があった場合に前方へ上半身を突出させ、代償的に下半身を後方に突出させる必要があります

これらの調整を行うための協調性も必要となります

テスト9 床から物を拾う

感覚機能(身体イメージ)

床から物を拾うためには身体を前傾させる必要があります

上肢前方リーチのテスト同様と考えられます

自身が安全に戻れる範囲を理解できていることが一つの条件となります

そのため、足底を知覚できる感覚機能が必要です

筋出力低下(遠心性活動)

床からの物を拾う際に重心を低くする必要があります

体幹伸展筋群・股関節の伸筋・膝関節の伸筋・足関節の底屈筋の遠心性の活動が必要となります

筋の協調性

上半身を前傾させると下半身の重心を後方に残し、重心のバランスを取る必要があります

それらの協調性も必要になると考えられます

テスト10 左右の肩越しに後ろを振り向く

感覚機能

立位から左右に体幹を回旋して後方まで振り向くテストです

頭部を大きく動かすため、前庭感覚と視覚が活用しづらい中での姿勢を保つ課題となります

よって足底からの感覚や筋等からの固有感覚の情報が必要となります

水平面の関節可動域

バランスをとる際に身体全身が協調的に働く必要性があります

振り向くにしろ、歩くにしろ、方向転換するにしろ捻る動きはバランスが取りづらくなります

もし頭頸部や体幹の回旋の可動域が乏しい場合に、骨盤(股関節)で大きく代償する必要性があり、バランスを崩しやすくなってしまいます

また少し話がずれますが、そもそも体幹のバランスが悪い場合には代償的に骨盤帯から頸部まで固定的に使用しやすいです

結果、可動域制限が知らぬに発生していることもよくあります

テスト11 360°回転

俊敏性

360度回転はその場で4秒以内に立位で360度回転する動作です

11番目のテストで初めて速度を求められる課題となります

崩れた姿勢を立て直すために俊敏性が必要な時があります

もしこのテストが苦手であった場合には瞬間的な筋出力を発揮する機能低下が考えられます

両側への重心移動

この課題は今までの重心移動と違います

5番目の「移乗」、7番目の「閉脚立位」では片足がステップ踏めればテストとしては可能でした

しかしこの11番目のテストの360度回転は必ず両脚のステップが必要となります

要するに障害側、苦手側にも強い荷重をのせる必要性があります

片麻痺であれば麻痺側への荷重、整形疾患であれば痛みやしびれがある側に荷重をのせる必要性があります

その為、この課題が苦手な場合には、どちらかの脚の荷重が苦手で反対側をステップできる機能が十分にない可能性があります

予測的姿勢制御

立位でステップを踏みながら方向を変える課題です

それは重心の位置や支持面を何度も変える課題であると言い換えられます

自身が動くことでどのような姿勢制御が必要となるか予測できなければ円滑かつ俊敏に動作を行うことができません

よってこのテストが困難・もしくは遅延する場合には予測的姿勢制御を発揮することが苦手な可能性があります

テスト12 段差踏み替え

片側への強い荷重

段差踏み替えは片足を台の上に置く課題を20秒以内に8回繰り返す課題です

11番目までのテストでもステップを含む課題はありました

それらと比較すると台の上に足を載せる分、ステップ側の足の対空時間を伸ばす必要かがあります

結果、今までのテストより支持する側に荷重を乗せる必要があります

俊敏性(矢状面上)

段差踏み替えの課題も達成の速さを求められます

11番目の360度回転のテストと同様に筋の素早い筋収縮の発揮と、予測的姿勢制御が必要となります

この課題は11番目の360度回転のテストと比べると前後方向の動揺が大きいのが特徴です

その為、支持脚の足関節底屈筋や股関節伸筋の瞬間的な筋出力、もしくは予測的姿勢制御が求められます

テスト13 継ぎ足位での立位保持

継ぎ足位での立位保持はFBS内の項目のうち最も難易度が高い課題となります(望月 2005

後方脚の支持性

両側の足を前後に配置した状態で立位保持をする課題です

Mann肢位、タンデム肢位とも呼ばれる姿勢です

前方にある脚と後方にある脚で役割が変わります

特に後方脚に荷重が乗りやすい傾向にある姿勢であり、後方脚に荷重が載せられるかがこの課題ができるための一つの構成要素となります

前額面上の高度な姿勢制御

継ぎ足の肢位をとっているため、左右方向の支持基底面は足部の横径くらいと狭いです

そのため、前額面上の高い姿勢制御機能が求められます

両股関節が内転位での立位であり、股関節戦略を活用しづらい状況です

よって足関節戦略による足部回内回外の動きが円滑に行うことができないと困難な課題となります

テスト14 片脚立位保持

あらゆる姿勢制御機能が必要

片足立ちで10秒以上姿勢を保持する課題です

これはあらゆる姿勢制御の能力を必要とします(なんか雑な考察ですみません)

前庭感覚・深部感覚・視覚による感覚統合や各関節における協調性も大切になります

支持脚の筋力も必要ですし、動揺した時に立ち直るための俊敏性も必要です

予測的姿勢制御でどのように動揺するかも予測されていないと長い時間の保持は困難です

支持面が今までのテストと比にならないほど狭いので足部内在筋の活動も重要な要素となります

浮かせている脚の重みもバランスに影響を与えるため、その脚の運動制御能力もこの課題には影響します

反対に高度な姿勢制御で多くの要素が交わるからこそ、一部不十分な機能があってもテスト自体は他の機能に代償され達成できる可能性があります

なのでもし片脚立位保持のテストから機能低下を考えるよりも一つのパフォーマンスのテストとして割り切るのも1つの考え方かもしれません

もし機能低下の考察に使いたいのであれば、一部介助した時にどのようにテスト結果が変わるのかを試してみても良いかもしれません

例えば

①平行棒内で両手で手すりを持った状態で片脚立位が取れるのか

→支持性は課題ではなさそう

②平行棒内片脚立位保持の状態から両手は離せるのか

→取れるならば姿勢を作る時に課題がありそう

③裸足ならば片脚立位が取れるのか

→感覚が知覚されやすいと姿勢が取れるならば感覚機能低下が疑わしいか

等の試行錯誤をすることで課題が顕在化できると思います

終わりに

各テストにおいて必要な要素を整理していきました

文言は違いますが、大きく分類してしまえばBESTestの評価項目である6つのシステムで考えることが一番整理しやすいのではないでしょうか

BBS・FBSとBESTestの違いをまとめています

良ければ下記記事もご参照下さい

引用文献

姿勢の定位と平衡:転倒予防のための平衡の神経制御について何を知る必要があるか?

Horak FB. Postural orientation and equilibrium: what do we need to know about neural control of balance to prevent falls?. Age Ageing. 2006 Sep;35 Suppl 2:ii7-ii11.

森田智美他:立ち上がり動作を容易に行うために必要な足関節背屈可動域の検討-床反力、股関節屈曲角度に着目して-.理学療法 – 臨床・研究・教育、19:23-26,2012.

座位から立位への動作の決定要因:レビュー

Janssen WG, Bussmann HB, Stam HJ. Determinants of the sit-to-stand movement: a review. Phys Ther. 2002 Sep;82(9):866-79.

高齢者の座位から立位への動作は、筋力に加え、感覚、速度、バランス、心理状態に依存する

Lord SR, Murray SM, Chapman K, Munro B, Tiedemann A. Sit-to-stand performance depends on sensation, speed, balance, and psychological status in addition to strength in older people. J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2002 Aug;57(8):M539-43. 

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