はじめに
- FBS(Functional Balance Scale)でカットオフ値以上なんだけどなんとなく自立にするには不安だ
- FBSってカットオフ値を見る以外にどんな意味があるの?
- FBSが満点で今後の比較にならない
- 検査をしてバランスが悪いのは分かったけど結局どんな治療をしたらよいのかわからない
- そもそもバランスってなんとなくでしか理解してなくてよくわからない
そんな時に役立つ方法について紹介します
BESTest (Balance Evaluation-Systems Test)
結論から言うと「BESTest」を理解しましょう
BESTestとは
Horakら(2009)により考案されたバランス機能評価です
今までのカットオフ値による転倒リスクを図るバランステストとは違い、バランス制御を6つに分類します
それぞれを点数化することでどのような要素でバランス不良なのかを明確化することができるテストです
BESTest は各セクションが 3~7 項目のテストで構成されています
全 27 項目,左右等を加味すると 36 テストが含まれます
普段から実施するテストとしては36テストは多く、簡易版のMiniBESTest も存在しますが今回は割愛します
(MiniBESTest はBESTest のセクションIII~VIに含まれる12 項目,14テストで構成されます)
大雑把に言えば今までのバランス評価より細かくて原因が追究しやすいバランス評価表となります
6つの要素
- 生体力学的制約
- 安定限界
- 姿勢変化-予測的姿勢制御
- 反応的姿勢制御
- 感覚機能
- 歩行安定性
内容
Ⅰ.生体力学的制約
- 支持基底面
- CoM アライメント
- 足関節の筋力と可動域
- 股関節/体幹側屈力
- 床への座りと立ち上がり
Ⅱ.安定限界
- 坐位での垂直性と側屈
- 前方ファンクショナルリーチ
- 側方ファンクショナルリーチ
Ⅲ.姿勢変化−予測的姿勢制御
- 坐位から立位
- つま先立ち
- 片足立ち
- 交互の段差タッチ
- 立位での上肢挙上
Ⅳ.反応的姿勢制御
- 姿勢保持反応—前方
- 姿勢保持反応—後方
- 代償的な修正ステップ−前方
- 代償的な修正ステップ−後方
- 代償的な修正ステップ−側方
Ⅴ.感覚機能
- バランスのための感覚統合(修正版 CTSIB)
- 斜面台—閉眼
Ⅵ.歩行安定性
- 歩行−平地
- 歩行速度の変化
- 頭を水平回旋させながらの歩行
- 歩行時ピボットターン
- 障害物またぎ
- TIMED “GET UP& GO”
- 二重課題付き TIMED “GET UP& GO”
カットオフ値
・82点(約75%)
地域高齢者に対し、過去一年の転倒歴から捻出したカットオフ値(Marques 2016)
下記記事で詳しく書いてあります
・71.3%(約77点):
多施設の回復期入院患者に対し退院後6か月転倒していないカットオフ値。(宮田 2016)
・69%(約75点)
地域のPD患者に対し、転倒の危険があるカットオフ値(Leddy AL 2011)
・73点(約67.5%):
1つの回復期病院における退院直前の患者に対し、病棟内自立と判断されたカットオフ値(長谷川 2015)
活用例
バランス評価の理解促進に
上記で挙げられたようにバランス制御にはいくつかの要素があります(ここでは6つ)
BESTestを学ぶことでFBSのバランステストをする際にもどのような要素を含んでいるか見当をつけやすくなるかと思います
反応的姿勢制御の評価として
FBSでは反応的姿勢制御を中心に見る項目がない為、個別で反応的姿勢制御を見てもよいかもしれません
ふらふらして転びそうだけれどもなんだかんだステップ反応等の平衡反応によって転ばないような患者の場合FBSだけでは評価しきれないかもしれません
患者がFBS満点で比較できない場合に
FBSは天井効果があり、運動機能が高い患者では入院時から満点の時もあります
BESTestの方が難易度が高く、検査結果の変化が得られやすい特徴があります
認知機能がバランス不良に関わっている場合に
FBSでは認知を要求される課題がありませんが、BESTestでは認知機能を使う課題があります
運動機能は良いが高次脳機能障害や認知機能低下があり転倒リスクが高いと思われる時には活用できるかと思います
垂直性の評価をしたい場合に
重力や床面、または錯覚等によりどの方向に身体が傾いているかを理解することも姿勢を保つためには重要な要素です
健康な状態であれば重力や床面、課題によって身体の向きを適応させられます
それらを理解するため自身の垂直性を知る必要があります
重力、支持面、視覚的周囲に対して身体部位を方向付ける能力は、姿勢制御の重要な要素です
簡単に言ってしまえばPush現象を呈する患者さんはこの垂直性が破綻していることが多いです
この垂直性の評価も取り入れたい場合にはBESTestが活用できると思います
まとめ
決してFBSよりBESTestを採択するべきと言いたいわけではありません
ただし、BESTestを知ることでFBS等の他のバランス評価で網羅できないバランス不良の理解や
またその治療の一助となるのでは無いかと思い、ここで紹介させてもらいました
普段から患者の動作分析をして、その動作にはどのような構成要素があるかを意識しているスタッフには余計な情報とは思います
しかし若手が動作の構成要素を考える為には有意義に活用できるかと思いますので是非BESTestを参考にしてみてください
引用文献
バランス障害を鑑別するためのバランス評価システムテスト(BESTest)