BBSやBESTestのバランス評価ってよく転倒リスクのカットオフ値が出されるけど、実際はカットオフ値より低い点数で歩行器使って自立になることが多いよね
そうですね。実際に総合的に見るバランス検査のカットオフ値を超えなくても安定しているケースは多いですね
じゃあ歩行器使ったときの歩行を自立とするときの根拠って考えづらいね
考えづらいですね。では今回は歩行器を使った際の歩行自立判定するときの考え方について整理していきましょう
はーい
歩行器歩行自立に焦点を当てたカットオフ値は見当たらない
歩行器を使用した歩行の自立判定に焦点を当てた文献は見当たりません
歩行器と一概に言っても種類も多く多様性も高く研究しづらいことが考えられます
また歩行器自立にできるかどうかというのは病院に勤めるセラピストにとっては大切な情報ですが、医療業界全般から考えると重要度が低いのかもしれません
ではどのように歩行器歩行自立を判断するか
歩行器を使用するということは杖や支持なし歩行では不安定であることが前提かと思われます
自立というのは転倒しないためのバランス能力を有していると考えると「バランス」と「歩行器の特徴」について整理する必要があります
バランス
2015年にSibleyらはバランス検査の構成要素を9つに分類した文献を報告している(Sibley 2015)
それが以下の9つです
- 機能安定性限界
- 基礎となる運動システム
- 静的安定
- 動的安定
- 反応的姿勢制御
- 予測的姿勢制御
- 感覚統合
- 認知影響
- 垂直性
歩行器の特徴
歩行器と言っても種類も多く一概には言えません
今回はPick up walkerをイメージしてお話しします
歩行器のメリットとして体重を上半身や腕で支えることができること
支持基底面が広くなり重心を支持基底面内に収めやすくなること
の2点が大きな特徴かと思われます
ではバランスの9項目の中で歩行器を使うことによって補うことができる構成要素はどれなのか、補えないものはなんなのかを整理する必要があります
歩行器を使うことでも補えない構成要素
- 予測的姿勢制御
- 感覚統合
- 認知影響
- 垂直性
予測的姿勢制御
予測的姿勢制御は自身が動くときにその動きを予想して事前に重心を移動させたり、筋を働かせる準備をする能力です
これは歩行器を使用して上半身で体重を支えようが、支持基底面が増えようが賄えません
そのため自身で身体を動かすときのその反動でバランスを崩すようであれば歩行器での自立は難しいかもしれません
感覚統合
感覚統合はバランスをとるために必要な前庭感覚、深部感覚、視覚をうまく活用してバランスを取る能力です
状況によってうまく感覚機能を使い分けてバランスを取ります
例えば
暗闇であれば前庭感覚と深部感覚を多く使う
不整地であれば前庭感覚、視覚を優位に使う
などがあります
この感覚統合の要素も歩行器を使用することでは補えませんので、評価が必要です
しかし歩行器歩行自立を目指す段階において感覚機能を使い分ける機会も少ないかと思います
屋外に行く段階でなかったり、暗闇を歩くことも少ないと思います
安定して歩くために感覚機能は必要ですが、感覚を再分配する場面は少ないと考えられます
認知影響
認知影響は課題があってもバランスを保つことができる能力です
例えば歩いている時に話しかけられると止まってしまう患者さんはいませんか?
会話という認知課題があるなかでバランスを保ちながら歩くことが困難な方は止まってしまいます
このように同時に幾つかの課題を与えた時にバランスを崩す方は歩行器自立は難しいかもしれません
トイレで切迫した場面などでは転倒リスクが高くなることが考えられます
垂直性
重力方向を捉えることができる能力です
人間は重力の方向がわかっているから二足で立っていられるわけですが、それが障害されるとイメージ通りバランスは保てません
歩行器を使用することでうまく自身の垂直性を理解しやすくなる場面もありますが、基本的に歩行器は垂直性を大きく補う機能はなく、歩行器自立は困難と思われます
まとめ
歩行器を使用することでバランスを保つ補助になります
下記の4項目は歩行器を使用してもあまり意味がないバランスの構成要素です
- 予測的姿勢制御
- 感覚統合
- 認知影響
- 垂直性
この4つの要素が機能していることと、その他5つの要素が歩行器によって補えていれば歩行器歩行を自立として判断できるのではないでしょうか