脳卒中片麻痺の体幹崩れに対するアプローチ方法

セラピスト向け
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脳卒中片麻痺のリハビリでは手足の麻痺に注目しがちになります

しかし脳の中には手足以外にも体幹やバランスを支配する働きがあります

脳出血や脳梗塞により体幹を支配している部位も障害され体幹の機能が落ちることがよくあります

そんな時、どんなふうに介入していけばよいのでしょうか

そのような体幹に対するアプローチについてまとめていきたいと思います

脳卒中片麻痺の体幹の崩れ

脳卒中片麻痺の患者は重症度により様々な姿勢をとります

そんな中の一例ではありますが以下の様に言われています

脳卒中片麻痺患者の歩行は麻痺側の胸郭が下制・後方回旋すると報告されています1)

麻痺側の胸郭が下制・後方回旋しており、左右でのアンバランスさがあると歩行効率にも影響することが想像できるかと思います

胸郭は上半身重心の近くであり、重量としても重たい部分です

その結果、麻痺側の立脚期に後方に重心が残りやすく、また重心が下方に落ちやすくなります

それを非麻痺側の立脚期に代償しなければなりません

結果、非麻痺側下肢は平地にも関わらず段差を上がるような身体を持ち上げる様な使い方となってしまいます

また麻痺側後方に重心が偏位しているため麻痺側へ方向転換する時にフラつきやすくなります

両下肢だけの身体機能では改善できないバランス不良につながってしまいます

片麻痺の体幹トレーニング

片麻痺の体幹トレーニングとして歩行していればとりあえず強くなるのでは?と安易に考えていませんか?

若手の療法士では体幹への介入を行わず立って歩く訓練ばかり行う人もいます

もちろん立つ訓練、歩く訓練も大切な介入です

活動量を多く保つことも必要です

しかし体幹の機能不全が原因で歩行の効率が落ちている患者も多く存在します

歩行を繰り返すだけでは体幹全般の筋の緊張を高めることは可能となるかもしれませんが、選択的に使うことは難しくなります

選択的というのは踵接地において上部体幹を垂直に保ちながら骨盤を後傾させたり

骨盤に対し胸郭を反対方向に捻る回旋の動きだったり

歩行を効率的にするためには選択的な体幹活動が必要です

お勧めの訓練は 寝返り訓練

そこで歩行効率改善の目的であれば寝返り訓練をお勧めします

寝返りは片麻痺患者が固定的に使用しがちな腹直筋や脊柱起立筋の固定を抑制し

内腹斜筋・外腹斜筋を強調して活動を促すことができます

また麻痺側へ寝返ることで歩行における麻痺側支持期の関節運動・筋活動に近い働きをします

片麻痺患者の苦手な麻痺側立脚中期の訓練を低負荷で行うことができ、代償を抑えながら学習につなげることが可能となります

寝返り訓練の方法

寝返り訓練を行う上で、麻痺側・非麻痺側の両方へ寝返りをすることには利点があります

麻痺側への寝返りでは麻痺側の体幹を含めた支持性を高めることができます

支持性と簡単に使われがちな安直な単語ですが、

床に接している部分に近い身体が安定(支持)しなければ人間器用に動くことができません

仰向けであれば背筋と腹筋を協調的に働かせ、左側を下にした横向きであれば左側の体幹や股関節の筋群が緊張を高め、身体を安定させようとします

下側の筋群が適切に活動し安定させられるからこそ、四肢が安定して起用に動かすことができます

仰向けで寝ているにも関わらず、両手や両足の緊張が一向に抜けない患者さんとかいませんか?

それらは体幹だけではベッド上で安定しておらず、常時手や足に力が入っていることが一つの要因として考えらえれます

私自身が若手の頃、上記の「ベッド上での安定性」について何を言っているのか意味がわからなかったです

ベッドで寝ているだけなのに安定も不安定もないだろうと

私たちも大勢の人前で話すときには自然と無意識に力が入っていますよね?

その無意識に入る力の状態で寝ているのが患者さんです

もう少しイメージしやすくするとビルの屋上の端っこにあるベッドや少し傾斜して滑り落ちそうなベッドの上に寝ている様な感覚で寝ています

そんなベッドから落っこちてしまうわけにはいかないため、常に両上下肢に力が入ってしまい器用に動けません

この両上下肢に過剰な力が入らず、スムーズに運動ができるようにするために寝返りにて体幹を選択的に運動させる必要があります

まずは環境を整えた後、麻痺側への寝返りの訓練を進めていきます

麻痺側への寝返りは強引に行うと麻痺側の肩を痛めてしまいます

寝返る時の支持側の肩は肩甲骨の動きが乏しいと体重が肩甲上腕関節にストレスをかけてしまいます

肩を痛めないために大切なことは、①肩甲骨に対して胸郭が後方回旋させること ②枕を適切な高さにすることです

それらに留意して麻痺側への寝返りを繰り返していきます

繰り返し行い、麻痺側の体幹での支持性が高まりがあると非麻痺側上下肢の器用さが高まります

ここで言う器用さというのは他人に操られても簡単に合わせられることができる適度に力が抜けているような状況です

歩行訓練や立位訓練ばっかり行っている患者は上記の側臥位で適度に非麻痺側上下肢の力を抜くことが困難です

歩行における麻痺側立脚期に非麻痺側の力を適度に抜き、器用に使うことが難しいです

麻痺側体幹が後方に重心を残していることに対し、普段非麻痺側下肢の重みを利用してバランスを取っています

その様な代償歩行から離脱するためにも麻痺側への寝返りは必要な訓練の一つとなります

まとめ

バランスを取るためにも歩行効率を上げるためにも片麻痺患者の体幹アプローチ・トレーニングは必要です

一つの方法として寝返りは良い訓練ですので試してみてください

参考文献

1)脳卒中患者の体幹運動学と歩行パラメータの分析

Titus AW, Hillier S, Louw QA, Inglis-Jassiem G. An analysis of trunk kinematics and gait parameters in people with stroke. Afr J Disabil. 2018 Mar 29;7:310.

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