歩行時の体幹の活動について前回脊柱起立筋について話したけど、内腹斜筋・外腹斜筋はどのように働くの?
外腹斜筋・内腹斜筋は一般的に体幹(骨盤と胸郭)を回旋させる作用を持ちます
これらが歩行時にどのように働くのかを整理して行きましょう
内腹斜筋は立脚期、特に立脚中期(ミッドスタンス:Mst)に活動
内腹斜筋は立脚中期で強く働きます
内腹斜筋の下部の線維は横方向に走行しています
上記の図の右側が内腹斜筋です
横方向に働く筋が活動するとコルセットのような働きになります
そのため骨盤を安定させる作用が出てきます
骨盤には仙腸関節という不安定な関節があります
上記図の赤丸で囲まれた部分が仙腸関節です
仙腸関節はほぼ矢状面に近い面に関節面が向いています
それは荷重が加わることで容易に剪断力を生じてしまう関節面となってしまいます
これを安定させるために様々な靭帯がありますが、内腹斜筋の下部の線維もこれに役立っているのではないかと言われています
立脚中期という強く剪断力が生じる時期に置いて内腹斜筋が仙腸関節を安定させているようです
Snijdersら1)は下記3条件で内腹斜筋の波形が著しく減少したと報告しており、内腹斜筋が剪断力に対して活動していることを説明しています
- バス停で見られるような片足(対側) で休む場合
- 骨盤を後方に傾ける場合
- 骨盤ベルトを装着した場合
一度整理すると
内腹斜筋の下部線維(横行線維)は仙腸関節を安定させる為に立脚中期に強く働きます
内外腹斜筋重層部は遊脚期に活動
内外腹斜筋重層部は上記図にあるように側腹部の肋骨下部の位置の筋活動を示します
内外腹斜筋重層部は主に遊脚期に活動します
内外腹斜筋重層部は角度は違いますが内腹斜筋・外腹斜筋ともに縦方向の線維が多い部位です
作用としては外腹斜筋が胸郭に対して骨盤を後方回旋させ、内腹斜筋が胸郭に対して前方回旋させます
また両筋とも胸郭と骨盤を求心位に近づける作用があります
要するに胸郭に対して骨盤を引き上げる、もしくは遠心性収縮にてゆっくり骨盤を下制させる働きがあります
正常歩行において遊脚期では骨盤が下制します
しかし下制しすぎてしまうと足を降り出す為の床と骨盤の距離が十分に取れず、躓いてしまいます
この骨盤下制をコントロールするために内外腹斜筋重層部は遊脚期に活動します
・内外腹斜筋重層部について整理すると振り出しに必要な骨盤の傾きをコントロールするために遊脚期に活動します
外腹斜筋は両脚支持期に活動
左右両側の外腹斜筋は両脚支持期に活動します
両脚支持期とは名の通り歩行の周期の中で両足とも地面についている時期のことを言います
片側の脚は踵接地(イニシャルコンタクト:IC)~荷重応答期(ローディングレスポンス:LR)の時期、反対側の脚は遊脚前期(プレスイング:PSw)の時期に当たります
筋電図では外腹斜筋の上部をとっており、肋骨外側から腹部に向かう走行の部位で計測しています
上部の線維の主な作用として骨盤に対し胸郭を前方回旋させる作用があります
荷重応答期側の外腹斜筋
では左右それぞれの外腹斜筋の収縮はどのような意味があるのでしょうか
歩行周期で考えると荷重応答期に骨盤が前方移動します
この骨盤の前方移動に対し遅れて胸郭は前方移動しますが、この時期に胸郭が骨盤に置いていかれないようにするために外腹斜筋が活動します
遊脚前期側の外腹斜筋
遊脚前期側の外腹斜筋は回旋運動を相殺するために活動していると思われます
遊脚前期は同側の骨盤を最も後方回旋させている時期です
言い換えると反対側の骨盤が最も前方回旋している時期でもあります
歩行の効率を高めるために骨盤は歩行周期の中で回旋しています
しかし人間前方を向いて歩いている為、頭部を常に前を向かせる必要があります
要するに骨盤の回旋させる力が頭部に影響が出ないようどこかで相殺しないといけません
正常歩行では腰椎と胸椎は拮抗した運動をしていると言われており、骨盤の回旋を胸椎レベルで相殺していると思われます
この相殺の力を発生させるために最も対側の骨盤が前方回旋する際に遊脚前期側の外腹斜筋が活動していると考えられます
外腹斜筋についてまとめると
- 両脚支持期に活動します
- 胸郭の前方移動を助ける意味合いと骨盤回旋の相殺の意味があるようです
まとめ
内腹斜筋の下部線維(横行線維)は仙腸関節を安定させる為に立脚中期に強く働きます
内外腹斜筋重層部は振り出しに必要な骨盤の傾きをコントロールするために遊脚期に活動します
外腹斜筋は胸郭の前方移動を助ける意味合いと骨盤回旋の相殺の意味があるようです
おまけ
普段私が臨床中にイメージする図です
参考文献
1)様々な立位姿勢における腹筋と背筋の筋電図記録:仙腸関節の安定性に関するバイオメカニクスモデルの検証