細かい報連相が最強のマネジメントになる理由|回復期リハで「相談が増える」チームの作り方

セラピスト向け
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細かい報連相(マイクロ報連相)とは何か

「報連相は大事」と分かっていても、現場で難しいのは**“細かくやる”**の部分です。ここでいう細かい報連相は、監視や細かい指示出しではありません。むしろ狙いは逆で、小さな共有でズレを小さいうちに整えることです。

定義すると、マイクロ報連相は

  • 短く(30秒〜1分)
  • 早く(迷ったら即)
  • 頻回に(1日数回でもOK)行い、軌道修正と安心のために情報を出す運用です。

回復期リハは、患者状態が日々変化し、PT/OT/STや看護、医師、MSWなど多職種で“点の情報”が散らばります。だからこそ、点を線にするための「小さな共有」が効いてきます。


なぜ“細かい”報連相がチームに効くのか(心理・組織の根拠)

単純接触効果:接触回数が親近感を作る

人は接触回数が増えるほど、その対象に親しみを感じやすいことが知られています。これが単純接触効果です(Zajonc, 1968)。

細かい報連相は「話す回数」を増やします。結果として、相談の心理的ハードルが下がり、「困った時に声をかける」が起きやすくなります。

返報性(互恵性):小さな支援が協力を循環させる

もう一つが返報性(互恵性)です。人は助けてもらうと「返したい」と感じやすい(Gouldner, 1960)。

上司が小さな相談を丁寧に受ける、先に情報共有する、感謝を返す。こうした“小さな好意”が積み上がるほど、チーム内で協力が循環します。

心理的安全性:言い出せる空気が学習とエラー回避を支える

医療現場のコミュニケーションで本質的に重要なのは、「正解を言う」より**“言い出せる”**ことです。心理的安全性は、チームが対人リスク(質問・指摘・相談)を取っても大丈夫だという共有された信念として整理されています(Edmondson, 1999)。

細かい報連相は、心理的安全性を作るための“行動の土台”になります。回数が増えれば、失敗や不安も早めに出せるようになります。


医療・回復期リハでのメリット(ミス・不安・時間の観点)

ミスの早期発見と軌道修正

医療安全の観点では、情報共有が遅れるほど、修正コストが増えます。特に口頭指示や伝達のズレは、聞き違い・思い込みが絡みやすく、エラーにつながりやすい点が指摘されています(厚生労働省, 年不詳)。

だからこそ、違和感の段階で「今、こうで迷っています」と出せるチームは強いです。

「不安を抱える時間」を短縮できる

ミス自体もストレスですが、実は多くのスタッフが苦しいのは**“これ大丈夫かな…”を抱え続ける時間**です。

マイクロ報連相が回ると、不安が小さいうちに確認でき、心的負荷が長引きにくい。これは離職予防や疲弊予防にも直結します(Edmondson, 1999)。

多職種連携で“ズレ”が小さいうちに揃う

申し送りやハンドオーバーでは、標準化された枠組みが安全性を高めるとされ、SBARの活用などが推奨されています(WHO Patient Safety Solutions, 2007)。SBARは要点を揃えやすく、緊急度が高いほど効果を発揮します(Dunsford, 2009)。

レビュー研究でも、SBAR導入が患者安全の改善に寄与する可能性が示されています(Müller et al., 2018)。

回復期でも、転倒リスク、疼痛、装具、離床量、嚥下、家屋評価など情報が広いからこそ、型があると短く済みます。


現場で起きがちなつまずき(若手・中堅・管理側)

  • 若手:「こんなこと聞いていいのかな」「忙しそうで言い出せない」。報連相の重要性は分かっていても、直接話し合う機会が少ないと難しくなる、という指摘もあります(神奈川県看護協会, 2024)。
  • 中堅:自己解決が増えて抱え込みがち。結果として共有が遅れます。
  • 管理側:報連相を受ける側が“詰める・正す”中心になると、相談は減ります。心理的安全性は「ぬるい環境」ではなく、学習のために率直に言える環境です(Edmondson, 1999)。

明日からできる「マイクロ報連相」運用ルール

1分ルール(まず結論、次に背景)

報告は長くなると、要点が埋もれます。

  • 結論:何を決めたい/確認したいか
  • 背景:必要最小限
  • 次:自分の案 or 質問この順にすると、30秒〜1分で成立します。

SBARで“短く正確に”を標準化

SBARは「短く、漏れなく、同じ順序で」話すための枠組みです(IHI, 年不詳)。WHOも申し送りの標準化要素としてSBARを挙げています(WHO Patient Safety Solutions, 2007)。

回復期リハ向けに言い換えると、

  • S:いま何が起きてる?(転倒リスク上がった、疼痛増悪など)
  • B:背景は?(前日との変化、服薬、訓練内容)
  • A:評価は?(自分の見立て)
  • R:提案は?(看護と共有、医師確認、装具再評価など)

雑談→業務の順にする(入口を軽くする)

「関係ない会話」を挟むのは、実は合理的です。接触回数と親近感が積み上がると、業務の相談が出やすくなる(Zajonc, 1968)。

雑談は長くなくてOKです。10秒の一言でも、空気は変わります。

上司側の返し方テンプレ(相談が増える返答)

返答の基本は3点です。

  1. 受け止め:「共有ありがとう」
  2. 安心:「今の段階で出せたのが良い」
  3. 次の一手:「じゃあAを確認して、Bなら私に戻して」この返しは、心理的安全性を支え、次の相談を呼びます(Edmondson, 1999)。さらに、小さな支援の積み重ねは返報性で協力を回しやすくなります(Gouldner, 1960)。

やりすぎ防止(共有の基準線)

細かい報連相は万能ではありません。ポイントは**“基準線を決める”**こと。

例:

  • 迷ったら即共有(安全側)
  • 事実と解釈を分ける(混乱防止)
  • 「患者安全・予定変更・リスク上昇」は必ず共有(WHO Patient Safety Solutions, 2007)チームで線引きが揃うと、情報がノイズになりにくいです。

参考文献・引用サイト

(本文で引用した順)

  1. Zajonc, R.B. (1968). Attitudinal effects of mere exposure. Journal of Personality and Social Psychology, 9(2), 1–27.(PDF)
  2. Gouldner, A.W. (1960). The Norm of Reciprocity: A Preliminary Statement. American Sociological Review, 25, 161–178. DOI:10.2307/2092623  
  3. Edmondson, A. (1999). Psychological Safety and Learning Behavior in Work Teams. Administrative Science Quarterly, 44(2), 350–383.(PDF)  
  4. WHO Patient Safety Solutions. (2007). Communication during patient hand-overs.(PDF)  
  5. Dunsford, J. (2009). Structured communication: improving patient safety with SBAR. Nursing for Women’s Health, 13(5), 384–390.  
  6. Müller, M., et al. (2018). Impact of the communication and patient hand-off tool SBAR on patient safety: a systematic review. BMJ Open, 8:e022202.  
  7. Institute for Healthcare Improvement (IHI). (n.d.). SBAR Tool: Situation-Background-Assessment-Recommendation.  
  8. 厚生労働省.(年不詳). 重要事例情報-分析集(口頭指示の聞き違い等).  
  9. 神奈川県看護協会.(2024). 報・連・相.(PDF)  
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