歩行中の腹筋群の役割と重要性:最新研究から見るその動態

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日常生活で何気なく行っている「歩く」という動作。しかし、その背後では腹筋群が重要な役割を果たしていることをご存知でしょうか。今回は、最新の研究をもとに、歩行中の腹筋群の動態とその重要性について解説します。

歩行時の側腹筋群の動態

まず、三津橋ら(2015)の研究では、正常歩行時の側腹筋群(外腹斜筋、内腹斜筋、腹横筋)の動きを超音波画像診断装置を用いて観察しました。その結果、これらの筋肉は立脚中期から終期にかけて腹側へ移動し、遊脚相では背側へ移動することが明らかになりました。特に、腹横筋の筋厚変化率は外腹斜筋よりも有意に大きく、腹横筋の収縮・弛緩が体幹の安定性に大きく寄与していると考えられます。

参考文献:三津橋佳奈 他「正常歩行時の側腹筋群の動態 ─超音波画像診断装置を用いて─」理学療法科学 30(6):861–865,2015年

年齢による体幹筋の筋活動の違い

次に、三浦・鈴木(2008)は、若年層と壮年層の歩行時における体幹筋の筋活動を比較しました。結果、腰背筋群の筋活動パターンは両層で類似していたものの、腹筋群では差異が見られました。若年層では内腹斜筋の活動が立脚中期に有意に増加しましたが、壮年層ではその増加が見られませんでした。また、内外腹斜筋重層部位の筋活動も若年層では遊脚期に増大しましたが、壮年層では増加が遅れる傾向があり、加齢に伴う腹筋群の機能低下が示唆されています。

参考文献:三浦雄一郎・鈴木俊明「歩行時における体幹筋の筋活動―若年層と壮年層の比較―」理学療法学 43巻、2008年

脳卒中片麻痺患者の腹筋群の筋活動

さらに、森ら(2001)は、脳卒中片麻痺患者の歩行時における腹筋群の筋活動を調査しました。結果、腹直筋は持続的な筋活動を示し、腹斜筋群の筋活動パターンは個人差が大きいことが分かりました。特に麻痺側の腹斜筋群は過剰な筋活動を示す場合があり、これは非麻痺側の代償動作や麻痺側の過剰努力、痙縮などが要因と考えられます。

参考文献:森明子 他「脳卒中片麻痺患者の安静立位・歩行時における腹筋群の筋活動―表面筋電図を用いて―」川崎医療福祉学会誌 11(2):355-363,2001年

歩行中の側腹筋群の安定化トレーニングの可能性

これらの研究から、歩行中の側腹筋群は体幹の安定性に深く関与していることが明らかになりました。特に、腹横筋の収縮・弛緩が体幹の安定化に重要であり、内腹斜筋の活動も高いことが示されています。そのため、歩行時における側腹筋群の動きを意識したトレーニングやリハビリテーションは、効率的な歩行の実現や腰痛の予防に役立つと考えられます。

まとめ

歩行は単純な動作のように見えて、体幹の様々な筋肉が連動して働く複雑な動作です。特に側腹筋群は、体幹の安定性や歩行の効率性に大きく寄与しています。年齢や障害によってこれらの筋活動パターンは変化しうるため、個々の状態に合わせた適切なトレーニングが重要です。

参考文献

  1. 三津橋佳奈 他「正常歩行時の側腹筋群の動態 ─超音波画像診断装置を用いて─」理学療法科学 30(6):861–865,2015年
  2. 三浦雄一郎・鈴木俊明「歩行時における体幹筋の筋活動―若年層と壮年層の比較―」理学療法学 43巻、2008年
  3. 森明子 他「脳卒中片麻痺患者の安静立位・歩行時における腹筋群の筋活動―表面筋電図を用いて―」川崎医療福祉学会誌 11(2):355-363,2001年

日常生活の中で、腹筋群の重要性を再確認し、健康的な体づくりに役立ててみてはいかがでしょうか。

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