心不全って心臓の疾患だし、運動することで負荷を与えるのってなんか怖いよね
心不全は心臓の機能が悪くなっていますのでそう考えるのは自然ですね
ただし心不全を起こしてからある程度して落ち着いた時期にも怖がって何も運動をしなければ足腰が弱ってしまい別の身体の問題を起こしてしまいます
何もしないでどんどん身体が弱くなることも避けたいわよね
そうです。なので適度に運動をすることが求められています
今回は心不全に対するリハビリで運動をした際に中止する基準について整理していきましょう
心血管疾患における運動療法実施中の中止基準
絶対的中止基準
• 患者が運動の中止を希望
• 運動中の危険な症状を察知できないと判断される場合や意識状態の悪化
• 心停止,高度徐脈,致死的不整脈(心室頻拍・心室細動)の出現またはそれらを否定できない場合
• バイタルサインの急激な悪化や自覚症状の出現(強い胸痛・腹痛・背部痛,てんかん発作,意識消失,血圧低下,強い関節痛・筋肉痛など)を認める
• 心電図上,Q波のない誘導に1 mm以上のST上昇を認める(aVR,aVL,V1 誘導以外)
• 事故(転倒・転落,打撲・外傷,機器の故障など)が発生
相対的中止基準
• 同一運動強度または運動強度を弱めても胸部自覚症状やその他 の症状(低血糖発作,不整脈,めまい,頭痛,下肢痛,強い疲労感, 気分不良,関節痛や筋肉痛など)が悪化
• 経皮的動脈血酸素飽和度が90%未満へ低下または安静時から 5% 以上の低下
• 心電図上,新たな不整脈の出現や1 mm以上のST低下
• 血圧の低下(収縮期血圧< 80 mmHg)や上昇(収縮期血圧≧
250 mmHg,拡張期血圧≧115 mmHg)
• 徐脈の出現(心拍数≦40/min)
• 運動中の指示を守れない,転倒の危険性が生じるなど運動療法
継続が困難と判断される場合
日本循環器学会 / 日本心臓リハビリテーション学会合同ガイドライン
2021年改訂版 心血管疾患におけるリハビリテーションに関する ガイドライン
注意点
運動負荷の中止基準のエビデンスは十分ではないと言われています
患者の病態や服薬状況、普段の心拍数や血圧、ペースメーカーの有無など多様な条件の違いがあります
運動療法の中止基準は患者の主観的訴えも大切な情報になりますし、スタッフから見た客観的な評価も大切な情報となります
その多様な事情を考えると中止を考慮するべきな相対的な中止基準を考える必要があります
また上記はあくまで中止基準です
そもそも運動療法が禁忌となる病態や症状があります
運動療法を行うこと自体が危険となる病態も多く存在します
心不全患者での禁忌となる病態・症状も下記に記しておきますのでご参考にされば幸いです
心不全患者で運動療法が禁忌となる病態・症状
絶対禁忌
1.過去 3 日以内における自覚症状の増悪
2.不安定狭心症または閾値の低い心筋虚血
3.手術適応のある重症弁膜症,特に症候性大動脈弁狭窄症
4.重症の左室流出路狭窄
5.血行動態異常の原因となるコントロール不良の不整脈(心室細動,持続性心室頻拍)
6.活動性の心筋炎,心膜炎,心内膜炎
7.急性全身性疾患または発熱
8.運動療法が禁忌となるその他の疾患(急性大動脈解離,中等度以上の大動脈瘤,重症高血圧,血栓性静脈炎,2 週間以内の塞 栓症,重篤な他臓器障害など)
相対禁忌
1.NYHA 心機能分類 IV 度
2.過去1週間以内における自覚症状増悪や体重の2 kg以上の増加
3.中等症の左室流出路狭窄
4.血行動態が保持された心拍数コントロール不良の頻脈性または徐脈性不整脈(非持続性心室頻拍,頻脈性心房細動,頻脈性心房粗動など)
5.高度房室ブロック 6.運動による自覚症状の悪化(疲労,めまい,発汗多量,呼吸困難など)
日本循環器学会 / 日本心臓リハビリテーション学会合同ガイドライン
2021年改訂版 心血管疾患におけるリハビリテーションに関する ガイドライン
まとめ
患者の病態によってリスクの大小は様々です
心不全が悪化しない範囲で運動負荷を高めていくことで患者のQOLを高めていくことができます
安全管理した上で有効なリハビリ介入が行えるよう中止基準を活用していきましょう
ただしあくまで中止の「基準」です。主治医等を含む医療チーム内で相談をしてください