2026年(令和8年度)診療報酬改定が近づくと、回復期リハ病棟では必ず「FIMが低い患者さんは取りにくくなるらしい」「認知が低いと改善しないから不利らしい」といった噂が増えます。給料や病棟運営に関わる話なので、不安になるのは自然です。ただ、噂に振り回されるほど現場の判断がブレて、患者さんにもスタッフにも良くない影響が出やすい。そこで今回は、**公式資料で示されている“論点(方向性)”**を軸に、現場で準備できることまで落としていきます。
まず結論|2026改定で回復期リハが見られる「方向性」
公式資料では、回復期リハ病棟について**「より質の高いアウトカム評価を推進する観点から、リハビリテーション実績指数の算出方法および除外対象患者の基準を見直す」と明記されています(中央社会保険医療協議会,2026)(厚生労働省,2026)。
ここが「どこが基準になるの?」の答えに近い部分です。まだ“確定ルール”ではありませんが、少なくともアウトカム評価を前提に、実績指数と除外の仕組みを整え直す**方向は示されています(中央社会保険医療協議会,2026)。
実績指数は何を見ている?(超ざっくり→現場に起きること)
実績指数は、簡単に言うと「回復期リハ病棟が、どれくらいADLを伸ばし、どれくらい効率よく退棟につなげたか」を見ようとする仕組みです。実績指数の算出では、FIM(運動項目)をADLスコアとして用い、入棟〜退棟の差(利得)をもとに評価します(厚生労働省,2017)。
ここで若手がつまずきやすいのが「点数が上がる=全部良い」という単純化です。FIMは同じ1点でも意味が違います。2→3が在宅生活の安全性に直結する人もいれば、6→7が“自立の質”を上げる人もいる。
だから病棟としては、点数だけでなく“生活課題(退院後の困りごと)”とセットで見るほうが、結局アウトカムも上がりやすいと感じます。
「FIMが低い患者は取りにくくなる」噂の正体
噂の背景には、現行制度の“除外”の仕組みがあります。厚労省資料の整理では、実績指数の算出において、医療機関の判断で各月の入棟患者数の3割以下の範囲で「入棟時FIM運動20点以下」「入棟時FIM運動76点以上」「入棟時FIM認知24点以下」「入棟時年齢80歳以上」などを除外できる、とされています(厚生労働省,2017)。
さらに、高次脳機能障害の患者が特に多い病棟では、一定条件のもとで高次脳の患者をまとめて除外できる仕組みも示されています(厚生労働省,2017)。
では、なぜ見直し論点が出るのか。理由は大きく2つです。
- 除外に該当する患者が多い:除外基準に該当する患者割合が高い施設が多いことが指摘されています(WIC,2025)。
- “除外してよい患者”の妥当性:80歳以上やFIM認知24点以下の患者が、患者全体と比べてFIM利得に大きな差がない可能性が示された、という報道もあります(PT-OT-ST.NET,2025)(医療経済研究機構,2025)。
つまり噂の本質は、「認知が低い患者は改善しない」ではなく、**“除外の設計が現場行動を歪めないか”**という制度設計の問題です。実際、極めて重度(例:FIMが極端に低い)をどう扱うかは、受け入れ促進とアウトカム評価のバランスとして議論されています(Gem Med,2025)(医療経済研究機構,2025)。
高次脳機能障害の退院支援|一律にできないから“型”を作る
高次脳は症状も生活像も家族状況も多様です。だから支援は難しい。でも、支援プロセスは標準化できます。おすすめは次の“3点セット”です。
- 情報整理:症状名ではなく「生活行動」で課題を分解例:金銭管理、服薬、外出、対人、家事、安全確認、怒り・衝動、予定管理
- 場面設定:病棟内の練習を、退院後の場面に寄せる例:買い物、公共交通、家族への説明、サービス利用の練習
- 連携:地域へ“丸投げ”ではなく、具体的な注意点を渡す例:訪問・通所・相談支援・就労支援へ、できること/危ない場面/声かけ方法
この型は、制度がどう変わっても「退院後の生活を守る」方向に効くので、結局アウトカムにもつながりやすいです。
管理者・教育担当が今から準備できること
最後に、改定前にやっておくと強いことを3つだけ。
- データ運用を“見える化”する:入棟FIMだけでなく、退院先・生活課題・家族介護力・サービス導入までセットで追う
- 病棟方針を言語化する:患者選定の倫理(クリームスキミング防止)を含め「回復期として何を大事にするか」をチームで共有
- 資料の読み方テンプレ化:①「議論の整理(案)」で論点を把握 → ②分科会資料・議事要旨で背景 → ③最終の“点数・要件(短冊)”で確定事項を確認※全部読まない。読む順番を固定する(中央社会保険医療協議会,2026)。
なお余談ですが、協会費の負担感もこの時期に話題になりがちです。日本理学療法士協会の年会費は「本会1万円+都道府県士会費」をまとめて請求と明記されています(日本理学療法士協会,2026)。会員向けの賠償責任保険(基本プラン)などの制度も案内されています(日本理学療法士協会,2026)。新人には重い金額なので、現場側が「学びの導線(何を学べば臨床が良くなるか)」を可視化できると、納得感が上がりやすいと感じます。
まとめ|噂に振り回されないチェックリスト
- 改定の方向性は「アウトカム評価の質を上げる」「実績指数の算出・除外基準を見直す」(中央社会保険医療協議会,2026)
- 噂の焦点は“認知が低いからダメ”ではなく、除外と重症割合の制度設計
- 病棟としては、退院支援の型とデータ運用を先に整えるのが一番強い

